駒の流儀・第26部

第128章「兄弟分」

 警視庁の次に、暇名小五郎が向った先は池袋だった。
  西池袋の喫茶店<ブランコ>で、温対記者と待ち合わせてから、山岡組の事務所へ行った。

温対記者 「暇名さん、目的は何ですか?」

     暇名小五郎 「はは。特に無いですよ。何か掴めるかと思っただけです」

      一度前に来ているだけに、温対も少しは気が楽だった。

暇名小五郎 「若頭の小茶園さんに、お会いしたいのですが」

      入り口で、応対した組員に丁重に伝えたが、組員のほうも暇名たちの顔を覚えていた。

組員<32歳> 「ああ、前に来た人たちだね。若頭は、今は組長になってるよ」

     どうやら、小茶園若頭は、組長に昇格したようだ。今、客が来てるから待ってるように言われた。
      30分ほど待っていると、奥の部屋から男が2人出てきた。

小茶園猛組長 「ははは。五郎、また遊びに来いや」

     石辺五郎 「ああ、そのうち来るから、いい女がいたら紹介頼むからな!!!!!!!!!11!!!1」

小茶園猛組長 「はは。お前も、相変わらず女好きだなあ」

     石辺五郎 「自分は、女の好みはうるさいんだから、不細工な女は駄目だからな!1!1!!」

小茶園猛組長 「わかったわかった。前の彼女を盗られたばっかしだってのに、懲りねえよなあお前は」

     石辺五郎 「したら、また来からな!1!!1!!1」

弐吐露隆若頭 「お疲れです」

     この弐吐露隆も、同時に若頭へ昇格していた。

石辺五郎 「おう。お前も頑張れよ!11111!!11」

石辺は、帰り際にチラッと暇名と温対のほうを見たが、そのまま何も言わず通り過ぎた。

温対記者 「ねえ、暇名さん。今の人は石辺じゃないですか?」

      温対記者は、小声で暇名に尋ねた。

       暇名小五郎 「ええ。間違いなく石辺五郎氏です」

      どうしてここに石辺五郎がいるのか、暇名探偵にも不思議だった。

小茶園猛組長 「おお、この前の人たちだな。組長の件か?」

      今は組長となった元若頭は、機嫌がよく、2人を今出てきた奥の部屋に招き入れた。

 温対記者 「あの、組長さん。いま帰った人は、石辺五郎さんでしょ?」

小茶園猛組長 「あれ? あんたら五郎を知ってるのか?」

      暇名小五郎 「はい。以前、初台のマンションでの盗難事件で、石辺さんが間違えられて捕まったことがありましたね。あの時、警察でお会いしてます」

小茶園猛組長 「ああ、そんなことがあったなあ」

       組長も、その時のことを思い出したようだ。

 小茶園猛組長 「それで、今日はなんの用だ」

       暇名小五郎 「亡くなった山岡組長さんの事件ですが、未だに犯人の目星がついていません。もう一度、何か参考になる話が聞けないかと思ってやって来ました」

小茶園猛組長 「そうか。いいよ。何でも聞いてくれよ」

       言葉とは裏腹に、小茶園組長は、やや迷惑そうな顔つきに見えた。

     暇名小五郎 「忙しいところをすみません。では、差しさわりが無ければですが、石辺さんは何の用事でこちらへ?」

小茶園猛組長 「五郎は、俺の兄弟分でな、ガキの時からのダチだ」

    暇名小五郎 「そうですか。お友達でしたか」

小茶園猛組長 「時々、事務所に遊びに来るんだが、俺が組長になったんで、あらためて顔を見に来てくれたんだよ」

  温対記者 「でも、たしか石辺さんは、タクシーの運転手さんですよね」

小茶園猛組長 「ああ、一応堅気だけどな。俺たちヤクザ者より、ずっと喧嘩も強いし度胸もあるし、うちの若頭に迎えたいぐれえだ」

   横に座っていた若頭の弐吐露隆は、無表情だったが、見る者によっては、かすかに頬が痙攣したようにも見えた。   

温対記者 「へえ。そうですよねえ。石辺さんて見るからに強そうで怖かったですから」

    その石辺五郎は、暇名小五郎の顔を知っていたはずだが、何故か反応が無かった。

投稿者: 悪魔仮面 投稿日時: 金, 09/03/2010 - 10:07 categories [ ]

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駒の流儀・第26部  第132章

第132章「と金倶楽部」

 東京池袋から秋田県、そして札幌である。
  1日の行程としては、かなりの強行軍だった。秋田から札幌までは、1時間かからない。

  北16条西3丁目は、JR札幌駅からだと車で約13分位の距離である。
     あたりはすっかり暗くなっていた。

温対記者 「札幌に来るのは、久しぶりですねえ。なんか懐かしいなあ」

      タクシーの中から見る札幌の夜の街は、華やかである。

 温対記者 「すすきののほうは、もっと派手なんでしょうねえ」

       暇名小五郎 「はは。時間があれば、行って見ますか?」

温対記者 「いいすねえ」

     皆本編集長がいれば、遊びに来たんじゃねえぞと、怒るところだ。

 温対記者 「暇名さんは、こっちのほうは来たことあるんですか?」

         暇名小五郎 「いや、ないですよ。まったく初めてです」

    タクシーは、左手に北海道大学の校舎の壁を映しながら、東へと走っていた。

運転手<46歳> 「お客さんは、東京からですか?」

     温対記者 「そうなんですよ。わかりますか?」

運転手 「そらぁ、わかりますよ。内地の人は、垢抜けしてるもんね」

      温対が垢抜けしているとは、とても思えないが、おそらく乗った客には、みんなに同じことを言ってるのであろう。
 

   温対記者 「この辺は、土地の値段も高いんでしょうねえ」

運転手 「そうだねえ。札幌は、函館、旭川、釧路などに比べると大都会だしねえ。結構いい値段するよ」

     暇名小五郎 「はは。東京や千葉あたりと、あまり変わらないかも知れませんね」

    自分で言っておきながら、暇名探偵は、千葉という言葉が妙に気になった。

運転手 「こっちには、仕事ですか?」

   温対記者 「そうなんですよお。早く終わったら、遊びに行きたいんすけどねえ」

運転手 「札幌は、結構遊ぶところがあるから、良かったら案内しますよ」

     温対記者 「ほんとすか?ねえ暇名さん、終わったら、すすきのですね」

        暇名小五郎 「ははは」

運転手 「なんなら、いろんなとこ案内するし、中島公園のビール園や、札幌ドーム、大通公園、狸小路・・・・・」

      話好きの運転手で、目的地に着くまでずうっと、しゃべり通しだった。
    最近のタクシーは、黙りこくって愛想が悪いか、喋りまくって愛想が良すぎるかの両極端である。
      どちらにしても、客にとっては、いい迷惑であった。

運転手 「お客さん、そこの家ですよ」

    タクシーは、ようやく目的地へ着いた。
    
     北16条周辺は、かつては北大の学生を受け入れるための下宿やアパート、寮などが点在していて、多勢の大学生が闊歩する姿が見られたものだが、今はすっかり様変わりして、民間世帯対象のマンションやオフィスビルが目立つようになってきていた。

温対記者 「あ、何か書いてありますね」

     よく見ると、<と金倶楽部>という小さな立て看板が入り口に掛かっていたが、普通の住宅だった。
    
     タクシー料金を払って、中へ入ると、玄関には5~6人の靴があった。
      温対が、応対に出てきた女性に名刺を渡すと、中に通された。

  

訳知雀席主<70歳> 「おお、あなたたちが東京から来た人たちかね。秋田の周さんから電話があったよ」

     
      どうやら、3万円の効果があったようだ。

  暇名小五郎 「突然お邪魔しまして、すみません。どうしてもお聞きしたいことがありまして」

     席主は、どうせ暇だから、構わないと言ってくれた。10畳位の部屋に、将棋台が5台並んでいた。
      そのうち、3つの台で6人が対局していた。

  温対記者 「将棋クラブっていうから、もっと大きい店かと思ってたんですけど」

訳知雀席主 「はは。儂は趣味でやってるだけだからな。半分は隠居生活だよ」

      1日の席料も、通常の将棋センターの半額ぐらいで、ほとんど固定客が席主の人柄と実力に魅かれて集まってきていた。
     今は引退したが、女流棋士の神田真由美さんの父親が開いていた、西日暮里神田教室と同じスタイルである。

訳知雀席主 「それで、用件というのは何だね?」

      席主は、東京からの客に喜んでいるようだった。

   暇名小五郎 「はい。実は、訳知さんが20年ほど前に、秋田県の上小阿仁村で新聞販売店を経営されていた時のことを、伺いに来ました」

   
訳知雀席主 「ほお、ずいぶん前のことを。・・・何故知りたいのかね?」

暇名は、これまでの経緯を要領よくまとめて説明した。

訳知雀席主 「そうか。話は分かった。・・・殺人事件が絡んでるとはねえ」

     重大な事件に関係する話だと聞いて、訳知席主も少し緊張したようだった。

     暇名小五郎 「正確に言いますと、22年前になるはずですが、新聞販売店でアルバイトしていた少年についてです」

 訳知雀席主 「うむ。それで」

       暇名小五郎 「猫面忠治という少年を覚えているでしょうか?」

訳知雀席主 「ああ、尺治さんのところの子だな。知ってるよ」

 温対記者 「やっぱり」

      暇名小五郎 「実は、その忠治さんは5年前に事故で亡くなってます」

    訳知席主は、知らなかったようで、驚きの表情だった。
 

駒の流儀・第26部  第131章

第131章「北の空へ」

 益田オーナーと一緒に、暇名たちも店に入ると、見慣れた顔の店主がいた。

周欲富店主 「アイヤー! 2人とも良く来たアルねぇ」

       温対記者 「どうも、こんにちは」

 暇名小五郎 「ラーメン美味しかったです」

     思わず温対は、暇名の顔を見た。暇名探偵は平然としていた。

  益田幸三新聞店主 「周さん。それで、この前言ってた話だけど・・」

周欲富店主 「ああ、あれアルね。訳知さんの居所のことアルね」

      ラーメン屋の店主は、すぐには話そうとしないで、煙草を吹かしていた。
       益田オーナーは、温対に目配せした。
 

  温対記者 「あの、これ少ないですけど」

     益田幸三に言われたとおり、温対は現金3万円渡した。

周欲富店主 「アイヤー! 悪いアルね。そんなことしなくてもいいアルのに。しぇいシェィ」

      周は、お金を受け取ると、あっという間に内ポケットにしまった。
 

    温対記者 「それで、訳知雀さんのことですけど・・」

周欲富店主 「はいはいはい。訳知さんは、アチとは長い付き合いアル。新聞販売店やってた時からで、今でも仲良しアルよ」

     思わぬお金を貰って、周は機嫌が良かった。

 周欲富店主 「アチは、この店のほかにパチンコ屋とスーパーもやってるアルからね、訳知さんのときは、しょっちゅうチラシ広告出してたアルよ」

      暇名小五郎 「なるほど。そのときからのお付き合いなんですね」

周欲富店主 「はいはい、そうアル。だから訳知さんも感謝してくれて、なんだか知らないけど、今でも毎年正月に年賀状くれるアルよ」

      暇名小五郎 「そうだったんですか。早く分かればよかった」

      周は、一番最近の年賀葉書を見せてくれた。

周欲富店主 「これが、今年の正月に届いた年賀状アル」

     札幌の消印があった。住所は札幌市北16条になっていた。

 周欲富店主 「今は、札幌で小さな将棋クラブをやってるアルヨ。あのヒトは、将棋強かったアルからネ」

      店主のほうは、6級の女房に負けると言ってるが、実際のところは分からなかった。
     暇名は、店の隅に古びた将棋盤と駒箱が置いてあるのを見て、それほど将棋の初心者ではないのかも知れないと思った。

  益田幸三新聞店主 「私もチラッと耳にしたことがあります。前のオーナーは、子供の時はプロ棋士になろうとしたとか」

        温対記者 「へえ。そうなんですかあ」

      温対は、訳知雀氏の住所を書き写した。

  暇名小五郎 「周さんも、益田さんもお世話になりました。有難うございます」

温対記者 「どうも、失礼します」

     礼を述べた後、行く先は決まっていた。

温対記者 「暇名さん、札幌ですか?」

   暇名小五郎 「もちろんです。行きましょう」

      秋田空港から、札幌新千歳空港へ向う便を確かめると、まだ間に合う。

     JAL2826便 秋田空港17時15分発。
       札幌新千歳空港着は、18時10分だった。

駒の流儀・第26部  第130章

第130章「情報」

 暇名小五郎と温対記者が山岡組の事務所を出ると同時に、暇名の携帯に連絡が入った。
   暇名探偵事務所の藤田舞子からだった。

藤田舞子事務員 「先生、今どこですか?」

     舞子の慌ただしい声が聞こえた。暇名は池袋だと答えて、用件を聞いた。

 
藤田舞子事務員 「今さっき、秋田県の上小阿仁村の益田という人から、先生に電話がありました」

     東北新聞販売店の店主である。

   暇名小五郎 「何だって!」

藤田舞子事務員 「それが、ちょっと会わせたい人がいるので、来て欲しいということでした」

    暇名小五郎 「それだけ? ほかに何か言ってた?」

 藤田舞子事務員 「いいえ。それだけです」

     暇名小五郎 「わかった。私はこれから秋田県に行くから、留守を頼む」

     暇名探偵は、電話を切ると通りかかったタクシーに手を挙げた。

温対記者 「どうしたんですか?」

    暇名小五郎 「新聞販売店のオーナーが、私に会わせたい人がいると言うのですよ。おそらく、猫面忠治君の友人の関係だと思います」

温対記者 「そうですか。じゃあ、僕も一緒させてください」

     皆本編集長の了承を得て、温対記者も暇名とともに、再び上小阿仁村へ行くことになった。

   上小阿仁村に着くと、2人は真っ直ぐ<東北新聞販売店>へ急いだ。

益田幸三店主 「おお、もう来たのか。早かったねえ」

     こんなに早く2人がやって来るとは、益田も思っていなかったようだった。

    暇名小五郎 「先日は、いろいろと有難うございました」

益田幸三店主 「早速だけどね。この前、あなた方が来た時、訳知雀さんの居所がわかったら、教えて欲しいと言ってたんでね、それで連絡したんですよ」

  温対記者 「じゃあ、わかったんですか?」

益田幸三店主 「ええ。但し、私じゃないんです。これから会いに行く人が分かっています」

  温対記者 「へえ、どうして分かったんですか?」

益田幸三店主 「私が何気なく、その人にあなたたちのことを話したら、前のオーナーのことを知ってるって言うんですよ」

    暇名小五郎 「そうでしたか」

益田幸三店主 「それで、その人だけど。お金に細かいというか、貪欲な人でね、ある程度お金を渡さないと、教えてくれないかも知れません」

     暇名小五郎 「はは。なるほど。幾らぐらい渡したら良いでしょうか?」

益田幸三店主 「そうだねえ。3万位出したほうがいいでしょうね」

温対記者 「ヒえー!それだけの情報で3万すかあ」

     暇名小五郎 「はは。そういう人もいますよ。ケチらないで、教えてもらいましょう」

      東北新聞店から10分ほど歩いたところで、益田オーナーが指を突き出して、<ここです>と言った。

 温対記者 「あれ、この前の店じゃないすか」

   見覚えのある<うろちょろ中華>の看板があった。

益田幸三店主 「知ってるのですか?」

     暇名小五郎 「そういうわけではないですが、ここでラーメンを食べて帰ったので」

 温対記者 「不味かったすよねえ、暇名さん」

      暇名小五郎 「ははは。聞こえますよ」

    この益田幸三からの情報は、まるで渋滞していた高速道路が、一転して一気に猛スピードで動き始めたような効果があったのである。
 

駒の流儀・第26部  第129章

第129章「闇金融」

暇名小五郎 「組長さん。何度も重複して同じことを聞くかもしれませんが、確認のためなので勘弁してください」

     組長は、わかったというように頷いた。

 暇名小五郎 「組長さんは、山岡さんと一緒に小浜市と福井市へ行ってますが、藁人形茂和社長の病状について、山岡さんは知っていたと思いますか?」

      小茶園猛組長 「いや、知らなかったはずだ。今から考えると、藁人形社長の病気のことを、調べたがっていたような気がするな」

暇名小五郎 「そうですか。私が後から調べたところでは、山岡さんは福井に泊まって、翌日担当の医師に会ったようです」

     小茶園猛組長 「やっぱりそうか」

温対記者 「でも、結局、医者も教えてくれなかったみたいです」

 暇名小五郎 「分からないのは、山岡さんは、何のために藁人形社長の病状を知りたかったかです」

     小茶園猛組長 「さあなあ」

         組長は、大きく首を振った。

暇名小五郎 「私の想像ですが、山岡さんは、その脳外科病院に行くまでは、一応殺害された茂幸アマ竜王の父親なので、母親だけではなく父親にも会って話を聞いてみようと思ったのではないでしょうか?」

    小茶園猛組長 「そういわれると、そんな気もするが」

 暇名小五郎 「つまりですね、山岡さんとしては、小浜市で母親に会ってきたついでに、軽い気持ちで父親のほうにも会いに行った。ところが、思っていた以上に重い病気で入院していた」

温対記者 「僕も入院してるって聞いたときは、息子さんが殺されたショックで入院したんだと思ってました」

暇名小五郎 「同感です。それで、いったいいつ頃から何の病気で入院しているのか、知りたくなったのでしょう。ところが、担当の医師が出張で不在だったので、あなただけを東京に帰して、その日は福井市に泊まったのだと思います」

     小茶園猛組長 「しかし、そのことと、組長の殺しと繋がりがあるのか?」

 暇名小五郎 「あると思います」

        名探偵が、自信を持って言い切った。

温対記者 「暇名さん、僕も知りたいですよ」

    小茶園猛組長 「だとすると、俺が帰らないで組長と一緒に残っていたら、組長は死なずにすんだということか?」

暇名小五郎 「それは何とも言えません。むしろ小茶園組長も危なかったかも知れませんね」

     小茶園猛組長 「うむ。2人とも殺られたということか・・」

 暇名小五郎 「分かっているのは、山岡さんが福井から帰ってきて、幾日もたたないうちに殺害されたという事実です」

    小茶園猛組長 「つまりだ。山岡組長は福井に行ったことが原因で、殺されたということなのか?」

暇名小五郎 「間違いありません。そこで、組長さんに教えていただきたいことは、山岡さんが福井から帰ってきて、殺害されるまでの間の行動です」

    小茶園猛組長 「組長が、何をしていたのかだな?」

      組長は、しばらく考え込んでいたが、何かを思い出したようだった。

    小茶園猛組長 「そういえば、組長は事務所に来て、すぐ金融のほうの帳簿を見てたようだった。なあ、若頭」

弐吐露隆若頭 「そうすね。そう言われると、珍しく帳簿を見てましたね」

暇名小五郎 「それは、貸金業のほうですか?」

     小茶園猛組長 「ああ、金貸しのほうでね。山岡商事っていうまっとうな会社だよ」

      何がまっとうだか。闇金業のことだった。

  弐吐露隆若頭 「亡くなった組長は、金融のほうには、それほど口を出すほうではなくて、たまに書類を点検するぐらいだったんすけどねえ」

暇名小五郎 「山岡さんは、その帳簿で何を調べていたのでしょうか?」

    小茶園猛組長 「さあ? 若頭わかるか?」

  弐吐露隆若頭 「自分が思うには、たぶん顧客リストを見て、相手の名前か残金を確認してたんじゃないすかねえ。結構熱心に見てたすから」

温対記者 「そういうのって、普通はパソコンで顧客管理しますけど、帳簿で管理してるんですか?」

    小茶園猛組長 「ああ。原始的だが、昔からこれだし、いざとなれば持って逃げれるしな。ははは」

      組長は、おどけて笑って見せた。 

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