駒の流儀・第22部

第106章「ゆきちゃん」

 西池袋の山岡組事務所は、殺気立っていた。
   組長が亡くなったのだから当然だったが、殺されたということで、余計緊張感が増していた。

温対記者 「暇名さん、なんか怖いですよ。また今度にしませんか?」

     若い組員が4、5人怖い顔で立ち番をしていた。

   暇名小五郎 「はは。大丈夫ですよ。いま行かないと意味がなくなりますからね」

    事務所の中を覗くと、警察や報道関係者、同業組織の面々などで溢れていた。

暇名小五郎 「これじゃあ、話が聞けないですね。午後から来ましょうか」

    温対記者 「そ、それがいいすね。別の日でもいいすけど」

      2人は、山岡組事務所から少し離れたところにある喫茶店を探して入った。

温対記者 「<ブランコ>って、いい名前ですねえ。女の子も可愛いしね」

       伊東美咲に似ているスリムな女の子が、注文をとりにきた。
   
 
    暇名小五郎 「ははは。藤田君に言っとくよ」

温対記者 「またあ。暇名さんは、意地悪だなあ」

    暇名小五郎 「ところで、名前のことですが。<ゆきちゃん>と呼ばれていたのですね。子供の時は・・」

温対記者 「ええ。それでプロ棋士に、その名前が入ってる人を抽出したんですけど、みんな違っていたということですよねえ」

    暇名小五郎 「はい。なぜ該当者がいなかったんですかねえ?」

      暇名は、温対に問いかけるような、自問自答するような、微妙な言い方をした。

温対記者 「さあ。なぜですかねえ」

       問いかけられた温対記者も、自分に問いかけるように答えた。

       暇名小五郎 「考えられることは、2つあります」

温対記者 「・・・」

    暇名小五郎 「まず<ゆきちゃん>は、プロ棋士ではないということが1つ」

温対記者 「ええ」

     暇名小五郎 「2つ目は、名前の中に<ゆき>という言葉は、入っていないことです」

温対記者 「はあ・・・」

     暇名小五郎 「温対さんなら、この2つしかないとすれば、どっちだと思いますか?」

      さっきの美咲ちゃんが、コーヒーを運んできた。

温対記者 「そうですねえ。2つ目のほうだと思います」

    温対は、彼女の後姿を鑑賞しながら、暇名の問いに答えた。

      暇名小五郎 「はい。私もそう思います」

       名探偵と意見が一致して、温対も気分が良かった。

暇名小五郎 「では、にもかかわらず何故、<ゆきちゃん>と呼ばれていたのかです」

      その答えは、容易には見つかりそうもないように思えたが、温対記者が面白い想像をした。
  

     温対記者 「ねえ、たとえば顔が橋幸夫に似てたとか、五木寛之や鳩山前総理に似てたとかじゃないですかねえ?」

暇名小五郎 「お!それいいですねえ。あり得ますよ」

     
        思わず暇名は、手を打った。

     温対記者 「そ、そうですか? 適当に言ったんですけど」

      暇名に誉められて、温対も満更ではなかった。

暇名小五郎 「だけど、肝心のその人の顔が分からないことには、誰に似ているのか比べようがないですね」

     温対記者 「たしかに・・・。残念だなあ」

暇名小五郎 「でも、温対さんのその推理は、当っているかも知れませんねえ」

      せっかくの名案も、今のところ役に立ちそうもなかったが、かなりの進展であることは間違いなかった。

暇名小五郎 「がっかりすることは無いですよ。いつか必ず、わかる時がきます」

      喫茶店<ブランコ>には、2時間ほど居てから、2人はそろそろ山岡組の事務所へ行くことにした。
     暇名たちにとっては、そこで思いがけない人物に出会うことになるのである。

投稿者: 悪魔仮面 投稿日時: 月, 08/02/2010 - 12:10 categories [ ]

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駒の流儀・第22部  第110章

第110章「508号室」

 三愛不動産で、脳外科病院の場所を教えてもらった2人は、小浜市から福井市へと移動した。

温対記者 「ねえ、暇名さん。藁人形さんの奥さんは、ご主人が病気で入院してるなんて、一言も言わなかったですよね。どうしてだろ?」

     暇名小五郎 「温対さんが、あの奥さんの立場だったらどうしますか? 言いますか?」

      暇名独特の、切り返しである。

温対記者 「そうですねえ。・・・やっぱり隠しておくでしょうね」

      暇名小五郎 「ええ、私も同じです。特に、息子さんが亡くなってて、旦那さんも入院してるなんてことは、他人には言いたくないでしょうからね。気持ちは理解できます」

       脳外科病院に着くと、暇名たちは、教えられたとおり<508号室>を訪ねた。

藁人形法子 「あら、たしか以前に自宅へ訪ねて来られた方たちですわね」

      社長の妻は、暇名たちを覚えていた。

    暇名小五郎 「病院まで押しかけてきて、すみません」

      仕事とはいえ、何度も押しかけてくるのは、気が引けるものであった。
  

藁人形法子 「いいえ。まだお聞きになりたいことが、あるのですか?」

     妻は、それほど嫌な顔はしていなかったので、2人ともほっとした。

    温対記者 「あの時は、息子さんが亡くなられたことで、話を聞きに行ったんですけど、あれからまた殺人が起こったんですよ」

     社長の妻は、少し驚いた顔をした。ベッドで寝ている藁人形社長の表情には、ほとんど変化がなかった。

藁人形法子 「そうですか。で、その殺人と私たちと、どんな関係があるのですか?」

     暇名小五郎 「はい。殺されたのは<山岡>という人です。その人は、或る将棋団体の依頼を受けて、息子さんの殺人事件を調べていたのです」

藁人形法子 「その名前の方なら、家に訪ねてきましたわ」

     暇名小五郎 「はい、そうでしたね。話すと長いのですが、その調査の過程において、山岡氏は奥さんに会った後、ご主人の会社にも行っております」

藁人形法子 「はあ。でも、よくそんなことまで分かりましたね」

      暇名小五郎 「実は、我々もご主人の会社の方に、この場所を聞いてやってきたのです」

藁人形法子 「わかりました」

     暇名小五郎 「山岡さんは、そこで強引に福井市の病院に入院していることを聞き出しました」

藁人形法子 「そうでしたか。病室に誰か訪ねて来たことは聞きましたけど、その方だったのですね」

      温対記者 「その時は、奥さんは病室にいなかったんですか?」

藁人形法子 「はい。私は過労で、自宅で寝込んでいました。今は、ようやく動けるようになったところですの」

      そういえば、小浜市の自宅で面会したときは、ずいぶんと具合が悪そうだったことを思い出した。

    暇名小五郎 「病室には、誰か付き添っていたのでしょうか?」

     相変わらず、藁人形茂和は何もしゃべらなかった。

藁人形法子 「ええ。私が義姉に頼んで、来てもらったんです。専門の付添い人を頼んでも良かったんですけど、息子のことがあって心細かったものですから、私からお願いしました」

      温対記者 「このまえ僕たちが、自宅にお邪魔したときに、お会いした人ですよね」

    暇名小五郎 「なるほど。そうすると、山岡氏が病室に訪ねて行った時に、お義姉さんが応対したのですね。今は、どちらに居られるのでしょうか?」

藁人形法子 「もう千葉県の自宅に帰りました。私が元気になりましたので」

       温対記者 「山岡さんは、何しに来たか分かりませんか?」

藁人形法子 「義姉の話では、主人の病気のことを聞いてきたと言っていました」

      暇名小五郎 「ほお。病気のことをですか・・・」

藁人形法子 「義姉は、知らない人にいきなり病気のことを聞かれても、患者の秘密だからと、教えなかったそうですわ」

   暇名小五郎 「それはそうですね。ほかには、どんなことを?」
 

駒の流儀・第22部  第109章

第109章「組長の行動」

 暇名と温対の2人は、山岡組の事務所を出ると、会社の車で再び警視庁に戻ることにした。

温対記者 「だけど、山岡さんは、いったい何をしに福井市まで行ったのでしょうかねえ?」

      暇名小五郎 「見当はつきますが、実際のことは、福井市まで行ってみないとわかりません」

温対記者 「じゃあ、行くんですか?」

      暇名小五郎 「もちろん行きますよ。その前に寅金警部に、このことを報告してからにします。温対さんも、編集長に了解を貰ってください」

      温対記者は、すぐ携帯で皆本編集長に事情を話して、出張の許可を得ていた。

    【警視庁 捜査一課】

 暇名たちは警視庁へ着くと、捜査一課の部屋へ直行した。金銀課長以下全員揃っていた。

寅金邪鬼警部 「お、暇名さん。また来たのかね」

     暇名小五郎 「たびたびすみません。お邪魔でしたか?」

寅金邪鬼警部 「いや構わんよ。むこうはどうだったね?」

     暇名小五郎 「ええ。少し収穫がありました」

温対記者 「最初は怖かったですけど、連合会の人たちもいたので、大丈夫でした」

    寅金邪鬼警部 「ほお、そうかね。ぜひ聞かせてもらいたいねえ」

暇名小五郎 「実は、こういうことなんですよ・・・・・」

     関東連合会の幹部が、殺された山岡組長の友人であったことや、山岡組長が福井県の小浜市から福井市へと出かけていたことなどを報告すると、刑事たちも興味深そうに聞き入っていた。

寅金邪鬼警部 「なるほどねえ。それで福井市に行くのか。殺された日ではないが、山岡組長がそういう行動をとっていたのは、興味があるねえ」

    金銀銅鉄一課長 「うむ。うちでも調べる必要があるぞ。警部、誰か行かせて調べるように」

天然流誠捜査官 「課長。私が行きます」

    金銀銅鉄一課長 「そうか。よし君に行ってもらう。但し、探偵や記者と、刑事が一緒に行くわけにもいかないから、時間をずらして行くように」

天然流誠捜査官 「承知しました。そうします」

     暇名小五郎 「では、私たちが先に行きますので、よろしく」

  こうして、天然流氏より一足先に福井県へ向った暇名探偵と温対記者だったが、福井市に行く前に、小浜市に寄った。

温対記者 「地図で見ると、このあたりですよ。」

      暇名小五郎 「そうみたいですね」

温対記者 「あ、あそこのビルじゃないすかねえ」

      温対記者が指し示したビルには、<三愛不動産>の横看板が大きく掲げられていた。

温対記者 「今日は。お邪魔します」

     応対した女子事務員に、温対は名刺を渡して、用件を伝えた。

女子事務員<20歳> 「はい。その方の名前は覚えておりませんが、たしかにそういう方が、社長はどこにいるか聞きにきました」

      暇名小五郎 「それで、どうしたのですか?」

女子事務員 「はい。あまり教えたくなかったのですけど、なんとなく怖い感じの人で、教えてくれるまでここを動かないと言いますので、部長に相談したら、教えていいよといわれたから教えました」

      刑事とヤクザは同類のようだ。どちらも脅しでくる。

    暇名小五郎 「そうですか。今も申しましたように、殺人事件に関わることですので、我々にも教えて下さい。あとから警視庁の刑事さんも、聞きにきます」

女子事務員 「わかりました。その方に教えたのも私ですが、社長は現在、福井県の脳外科病院に入院しております」

   そうか。殺された藁人形茂幸氏の父親は、そこに入院していたのか。暇名の頭の中で、阿佐ヶ谷から福井市まで、1本の線が引かれていた。
 

駒の流儀・第22部  第108章

第108章「若頭の証言」

暇名小五郎 「最近、山岡組長さんに何か、変わったことはありませんでしたか?」

     小茶園猛若頭 「変わったことというと?」

暇名小五郎 「たとえばですね、誰か初めての人が訪ねて来たとか、変わった場所に出かけたとか・・・」

    小茶園猛若頭 「そうすねえ・・・・別に無いすけど」

   
         ちょっと考えてから、答えた。

弐吐露隆若頭補佐 「兄貴。この前、組長と兄貴が出かけたとこは?」

       傍で聞いていた若頭補佐の弐吐露が、口を出した。

    小茶園猛若頭 「おお、そうか。そうだったな。最近だと、福井県に行ってますよ」

      弐吐露に教えられて、小茶園も思い出したように言った。
 

暇名小五郎 「福井県? 小浜市ですか?」

    小茶園猛若頭 「そうだ。よくわかるね」

     どうして暇名にわかったのか、小茶園は不思議そうだった。

温対記者 「僕たちも、小浜市に行ってきたんですよ。その時、山岡という人が訪ねて来たと言ってたんですけど、山岡の組長さんだったんですねえ」

     筒井村重本部長 「そういうことか。福井県の小浜市が、殺された藁人形茂幸氏の実家だったので、それで訪ねたんだね」

      流石、連合会随一のやり手本部長である。

 
暇名小五郎 「山岡組長さんは、お1人で行かれたのですか?」

     小茶園猛若頭 「いや。自分も同行してる」

暇名小五郎 「若頭さんと、ご一緒でしたか。そこでは何か、特別な発見はありましたか?」

    小茶園猛若頭 「さあなあ。自分はただ、ついてっただけだからな」

暇名小五郎 「行ったのは小浜市だけですか?」

     小茶園猛若頭 「小浜市から、すぐ福井市へ行ったんだ」

暇名小五郎 「福井市ですか。何しに行ったのでしょうか?」

    小茶園猛若頭 「組長と一緒に、藁人形氏の父親の会社に行ったんすがね、そこの会社の事務員に何か聞いていて、すぐ福井市まで行ったんですよ」

暇名小五郎 「その事務員に、何を聞いていたかわかりますか?」

     小茶園猛若頭 「さあ。自分は外で待ってただけだから」

暇名小五郎 「わかりました。それから福井市に行ったのですね。福井市の何処へ行ったのですか?」

      
小茶園猛若頭 「脳外科病院だった」

      筒井村重本部長 「誰かのお見舞いかい?」

小茶園猛若頭 「さあ。組長は、なんにも教えてくれねえから」

      若頭は、なんとなく不満げな口ぶりだった。

暇名小五郎 「普通、お見舞いなら花束とか、果物とか持って行きますが」

     小茶園猛若頭 「いや、手ぶらだったな」

暇名小五郎 「その脳外科病院は、初めて行ったような感じでしたか?」

     小茶園猛若頭 「そうだと思う。自分は福井市出身なんで、場所は分かるから案内したんだよ」

暇名小五郎 「そうでしたか。おそらく誰かの病室を訪ねたのでしょうけど、あなたは一緒に行かなかったのですね」

     小茶園猛若頭 「自分は、1階のロビーで待ってるように言われたからな」

暇名小五郎 「組長さんが戻ってくるまで、どのぐらい時間がかかりましたか?」

     小茶園猛若頭 「うーん。40分ぐらいだと思うけどね」

暇名小五郎 「組長さんは、戻ってきてから、なにか小茶園さんに話しましたか?」

    小茶園猛若頭 「いや、特にはなにも言わなかった」

       ここで若頭は、再び大きなアクビをした。

温対記者 「眠そうですけど、あまり睡眠時間がとれないのでしょうねえ」

     小茶園猛若頭 「ああ、寝てる暇はねえからな。だけど自分は、ガキの頃からいつも寝不足で、どこでも眠っちまうんだよ」

      温対も、子供のときから学校でもどこででも居眠りばかりしていたことを思い出した。

暇名小五郎 「わかりました。それで、そのまま一緒に東京に帰ってきたというわけですね」

    小茶園猛若頭 「あ、いや、自分だけ先に東京に戻って来たんだ」

暇名小五郎 「ん? 組長さんは、どうしたのですか?」

     小茶園猛若頭 「それが、組長はまだ用事があったみてえで、今夜は福井に泊まるから、お前だけ先に帰れと言われたんで、自分だけ東京に帰ったんだよ」

暇名小五郎 「なるほど。組長さんは、誰かと会うとか、何処へ行くとか言いませんでしたか?」

    小茶園猛若頭 「いいや、聞いてねえな。何も教えてくれねえのは、いつものことだからな」
 

駒の流儀・第22部  第107章

第107章「連合会の幹部」

 喫茶店を出て、2人が再び山岡組事務所を訪ねると、モヒカン刈りのあんちゃんが出てきて、忙しいからと断られた。
  温対が週刊誌の記者で、取材したいと申し入れても押し返された。

組員<23歳> 「いいから早く帰れ! いてまうぞお」

    急に関西弁になるところが、ヤクザの面白いところだ。脅しの効果は、東京より大阪のほうがあるというところか。

弐吐露隆若頭補佐 「お前ら、なに騒いでんだ?」

奧のほうから数名出てきた。

   組員<23歳> 「あ、兄貴。しつこい記者が取材に来てて、帰らねえんですよ」

弐吐露隆若頭補佐 「今は取り込んでるんだから、さっさと追い返せ! 取材どころじゃねえだろ」

      若頭補佐の弐吐露と一緒に、奧の部屋から出てきた男が、暇名の顔を見て驚いたような声を出した。

筒井村重本部長 「あれ、暇名さんじゃないですか」

     声の主を見ると、関東連合会の筒井村重本部長だった。仁歩書記長もいた。

暇名小五郎 「筒井さんに仁歩さん。どうしてここに?」

    仁歩犯則書記長 「暇名さんたちこそどうして・・・」

     お互いが、ヤクザの事務所で出合ったことを訝しがっていた。

弐吐露隆若頭補佐 「知り合いすか?」

    筒井村重本部長 「うん。有名な探偵さんと、有能な記者さんだ。親しくしてる」

弐吐露隆若頭補佐 「そうすか。失礼しました」

     軽く頭を下げた弐吐露隆は、昔の俳優でいえば、市川雷蔵似の、苦みばしったいい男だった。

    筒井村重本部長 「暇名さんが、なぜここに現れたのか、興味がありますなあ」

暇名小五郎 「私のほうは、捜査一課の警部さんから、阿佐ヶ谷の事件と手口が酷似しているからと、連絡をもらいましたので、とりあえず関連があるかどうか、確認に来たところです」

筒井村重本部長 「なるほど。暇名さんらしく、細かいところまで確認しようということですね」

     暇名小五郎 「それで、連合会の幹部のかたたちが、ここへは何をしに?」

筒井は、亡くなった山岡組長とは幼馴染だったこと、なぜここに来ているのか等、これまでの経緯を暇名たちに話した。

暇名小五郎 「そういうことだったのですか。よく分かりました」

    温対記者 「そうすると、山岡組長さんは、怪人60面相の事件を追っていたんですね」

小茶園猛若頭 「筒井さんの知り合いの人なら、俺の知り合いでもあります。ゆっくりしてって下さいよ」

     若頭は、事務員の女性に、コーヒーを持ってくるように言いつけた。
      暇名は、小茶園若頭に、山岡組長を殺害したのは、阿佐ヶ谷でアマ竜王を殺害した人物の可能性があることを説明した。

小茶園猛若頭 「そうすか。よくはわからねえけど、組長を殺った奴を捕まえるためなら、なんでも協力しますよ。聞きたいことがあったら聞いてください」

    筒井村重本部長 「暇名さん。我々も若頭から事情を聞いてたのですが、暇名さんがいれば心強いです」

     仁歩が、これまでに小茶園と話した内容を、かいつまんで説明してくれた。

暇名小五郎 「なるほど。それで、山岡さんのマンションに訪ねてくる人物は多いのですか?」

    小茶園猛若頭 「それほど多くはねえと思いますけど。そうだろ弐吐露?」

弐吐露隆若頭補佐 「そうすね。組関係の人間が用事で来るときは、必ず事務所に訪ねてきますから、直接マンションまで行くことはないです」

    暇名小五郎 「たとえば、どんな人が訪ねてくるでしょうかねえ?」

小茶園猛若頭 「あとは、女が何人かいますけど、それは飲むより買うほうですよ」

      若頭は小指を立てたが、寝不足なのか、さっきから何度もアクビばかりしていた。

     暇名小五郎 「そうすると、あまり仕事関係で、人を呼ぶということは無かったのですね」

      この際、女関係は除外した。

小茶園猛若頭 「まあ自分も、組長に張り付いていたわけじゃねえから、実際には誰と会ってたかどうかは、分かりませんけどね」

      暇名小五郎 「はい。よくわかりました」

     つまり、実際には組長が誰と会っていたのかは、よく分からないということのようだった。

暇名小五郎 「動機はどうですか? 最近、もめてるというか、敵対する組織なんかは?」

     小茶園猛若頭 「無いすよ。今頃、戦争してたら暴対法で、組ごと潰れちまいますよ。どことも平和的に付き合ってますから、そんな馬鹿いねえすよ」

     暇名も、それは若頭の言うとおりだと思った。

仁歩犯則書記長 「特に山岡の組長さんは、仲良くやってましたよね」

     筒井村重本部長 「そうだ。山岡は、恨まれるほどのことはしてないし、まして、殺されるようなことは無いはずだ」

温対記者 「そしたら、やっぱり怪人60面相に係わったからでしょうかねえ?」

連合会の幹部たちが、知り合いだということで、温対も急に元気が出てきていた。

   暇名小五郎 「筒井さんと仁歩さんは、山岡さんの仇を討ちたいでしょうから、私も微力ですが協力させていただきますよ」
 

    あらためて協力を申し出た暇名小五郎だったが、小茶園若頭とのやり取りが、再び北陸の空へと向うきっかけとなったのである。

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