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第137章「殺人鬼の影」
千代田図書館は、区役所と同じ建物の中に併設されている珍しい図書館である。 学生や一般のための自習室もあって、連日、受験生たちが勉強しにやってくる。
地下には食堂もあって、値段も手頃なため外部のサラリーマンやOLなども昼食に来ていた。
暇名小五郎が、過去の新聞記事を見始めてから2時間ほど経過していた。 特に目当ての記事があるわけではないので、流し読みだったが、これが結構疲れる。
主要全国紙を年代別に、順を追って見ているが、特に将棋に関係する記事があると注目して見た。 猫面忠治が、友達と一緒に新聞配達をしていた頃に流行していた歌は、あるいは政治家は、プロ野球は、将棋界の動きは、凶悪な事件は・・・・・
更に1時間が経過して、そろそろ帰ろうと思ったときに、或る記事が目に留まった。 別に珍しい記事ではなく、なんとなく見過ごしてしまっていたが、暇名の全身に一瞬、電気が走った。
暇名小五郎 「そうか! そうだったのか!!」
思わず口走ったため、周りの人が暇名のほうを見た。
暇名小五郎 「そうか、分かったぞ。気がつかなかった」
今度は、頭の中で聞こえない声を発した。
暇名小五郎 「・・・」
暇名は、しばらく呆然としていたが、おもむろに立ちあがると図書館を出てきた。 すぐ温対記者に電話を掛けると、新宿駅で待ち合わせた。
普段は冷静な暇名だったが、このときばかりは興奮を抑えられないでいた。 温対記者が、待ち合わせの喫茶店に来ると、さっそく関根銀四郎とのやりとりを尋ねた。
温対記者 「やっぱり、暇名さんの考えたとおりでした。関根総裁が間違いないと言ってくれましたよ」
暇名小五郎 「そうですか。やはり巻物の色は、奴の言うとおりだったんですね」
温対記者 「やはり怪人60面相と殺人犯は、同一人ということですか?」
暇名小五郎 「いや、そうとは限りませんよ。・・・なるほどねえ」
なぜか暇名探偵は、不敵な笑みを浮かべていた。
温対記者 「暇名さん。どういうことなのか、もう少し説明してくださいよ」
暇名小五郎 「つまりですね、流儀書は1つしかないのだから、巻物を持っている人物も1人だけです」
温対記者 「はい」
暇名小五郎 「しかし、本物が持っているとしたら偽者は持っていないのだから、巻物の色を当てることは不可能です」
温対記者 「そうですよね」
暇名小五郎 「それなのに、巻物の色を知っていたということは、過去に実物を見たことがあるということです」
温対記者 「そうか。それが忠治君の友だちなんですね」
暇名小五郎 「そうです。可能性は極めて高いですね」
無論、ほかの推測も成り立つのだが、解答書の無い答えを出す以上は、あくまでも高い確率を考えるのが、推理の常道である。
温対記者 「それで、図書館のほうでは何か分かったんですか?」
暇名小五郎 「はは。収穫がありました」
なんとなく暇名の顔が明るくなった。
温対記者 「へえ。うれしそうですねえ。少しは進展したようすねえ」
暇名小五郎 「実はね、殺人犯のほうも、ぼんやりとですが影が見えました。あとは、その影を踏むだけです」
温対記者 「えっ! ほんとなんですか!」
多少、手掛かりがあったぐらいに考えていた温対記者は、さすがにびっくりした。 まさか、殺人犯の身辺にも迫っていたとは、驚いて二の句が告げなかった。
温対記者 「そ、それで、誰なんですか?」 暇名小五郎 「まだ私の推測に過ぎません。迂闊なことは言えませんよ。警察やマスコミに話すには、証拠不足ですから」
温対記者 「ひ、暇名さん。そんなこと言わずに、記事にはしませんから、僕にだけ教えて下さいよお」
暇名小五郎 「もちろん温対さんに、一番先に話します。ただ、動機もまだ分かっていません。あくまでも推測なので、それを今から確かめに行きます。それまで待って下さい」
温対記者 「分かりました。それで、何処へ行くんですか?」
暇名小五郎 「福井県です。もう一度、脳外科病院に行って、主治医の先生に会います」
温対記者 「病院ですか。何しに行くんですか?」
暇名小五郎 「温対さんも一緒に行くのなら、列車の中で話します」
温対記者 「わかりました。編集長に許可をもらいます」
連絡を受けた皆本編集長は、もちろん福井行きを快諾してくれた。 いったい、福井には何があるのであろうか。
書式オプションに関するさらに詳しい情報...
駒の流儀・第27部 第137章
第137章「殺人鬼の影」
千代田図書館は、区役所と同じ建物の中に併設されている珍しい図書館である。
学生や一般のための自習室もあって、連日、受験生たちが勉強しにやってくる。
地下には食堂もあって、値段も手頃なため外部のサラリーマンやOLなども昼食に来ていた。
暇名小五郎が、過去の新聞記事を見始めてから2時間ほど経過していた。
特に目当ての記事があるわけではないので、流し読みだったが、これが結構疲れる。
主要全国紙を年代別に、順を追って見ているが、特に将棋に関係する記事があると注目して見た。
猫面忠治が、友達と一緒に新聞配達をしていた頃に流行していた歌は、あるいは政治家は、プロ野球は、将棋界の動きは、凶悪な事件は・・・・・
更に1時間が経過して、そろそろ帰ろうと思ったときに、或る記事が目に留まった。
別に珍しい記事ではなく、なんとなく見過ごしてしまっていたが、暇名の全身に一瞬、電気が走った。
暇名小五郎 「そうか! そうだったのか!!」
思わず口走ったため、周りの人が暇名のほうを見た。
暇名小五郎 「そうか、分かったぞ。気がつかなかった」
今度は、頭の中で聞こえない声を発した。
暇名小五郎 「・・・」
暇名は、しばらく呆然としていたが、おもむろに立ちあがると図書館を出てきた。
すぐ温対記者に電話を掛けると、新宿駅で待ち合わせた。
普段は冷静な暇名だったが、このときばかりは興奮を抑えられないでいた。
温対記者が、待ち合わせの喫茶店に来ると、さっそく関根銀四郎とのやりとりを尋ねた。
温対記者 「やっぱり、暇名さんの考えたとおりでした。関根総裁が間違いないと言ってくれましたよ」
暇名小五郎 「そうですか。やはり巻物の色は、奴の言うとおりだったんですね」
温対記者 「やはり怪人60面相と殺人犯は、同一人ということですか?」
暇名小五郎 「いや、そうとは限りませんよ。・・・なるほどねえ」
なぜか暇名探偵は、不敵な笑みを浮かべていた。
温対記者 「暇名さん。どういうことなのか、もう少し説明してくださいよ」
暇名小五郎 「つまりですね、流儀書は1つしかないのだから、巻物を持っている人物も1人だけです」
温対記者 「はい」
暇名小五郎 「しかし、本物が持っているとしたら偽者は持っていないのだから、巻物の色を当てることは不可能です」
温対記者 「そうですよね」
暇名小五郎 「それなのに、巻物の色を知っていたということは、過去に実物を見たことがあるということです」
温対記者 「そうか。それが忠治君の友だちなんですね」
暇名小五郎 「そうです。可能性は極めて高いですね」
無論、ほかの推測も成り立つのだが、解答書の無い答えを出す以上は、あくまでも高い確率を考えるのが、推理の常道である。
温対記者 「それで、図書館のほうでは何か分かったんですか?」
暇名小五郎 「はは。収穫がありました」
なんとなく暇名の顔が明るくなった。
温対記者 「へえ。うれしそうですねえ。少しは進展したようすねえ」
暇名小五郎 「実はね、殺人犯のほうも、ぼんやりとですが影が見えました。あとは、その影を踏むだけです」
温対記者 「えっ! ほんとなんですか!」
多少、手掛かりがあったぐらいに考えていた温対記者は、さすがにびっくりした。
まさか、殺人犯の身辺にも迫っていたとは、驚いて二の句が告げなかった。
温対記者 「そ、それで、誰なんですか?」
暇名小五郎 「まだ私の推測に過ぎません。迂闊なことは言えませんよ。警察やマスコミに話すには、証拠不足ですから」
温対記者 「ひ、暇名さん。そんなこと言わずに、記事にはしませんから、僕にだけ教えて下さいよお」
暇名小五郎 「もちろん温対さんに、一番先に話します。ただ、動機もまだ分かっていません。あくまでも推測なので、それを今から確かめに行きます。それまで待って下さい」
温対記者 「分かりました。それで、何処へ行くんですか?」
暇名小五郎 「福井県です。もう一度、脳外科病院に行って、主治医の先生に会います」
温対記者 「病院ですか。何しに行くんですか?」
暇名小五郎 「温対さんも一緒に行くのなら、列車の中で話します」
温対記者 「わかりました。編集長に許可をもらいます」
連絡を受けた皆本編集長は、もちろん福井行きを快諾してくれた。
いったい、福井には何があるのであろうか。