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第132章「と金倶楽部」
東京池袋から秋田県、そして札幌である。 1日の行程としては、かなりの強行軍だった。秋田から札幌までは、1時間かからない。
北16条西3丁目は、JR札幌駅からだと車で約13分位の距離である。 あたりはすっかり暗くなっていた。
温対記者 「札幌に来るのは、久しぶりですねえ。なんか懐かしいなあ」
タクシーの中から見る札幌の夜の街は、華やかである。
温対記者 「すすきののほうは、もっと派手なんでしょうねえ」
暇名小五郎 「はは。時間があれば、行って見ますか?」
温対記者 「いいすねえ」
皆本編集長がいれば、遊びに来たんじゃねえぞと、怒るところだ。
温対記者 「暇名さんは、こっちのほうは来たことあるんですか?」
暇名小五郎 「いや、ないですよ。まったく初めてです」
タクシーは、左手に北海道大学の校舎の壁を映しながら、東へと走っていた。
運転手<46歳> 「お客さんは、東京からですか?」
温対記者 「そうなんですよ。わかりますか?」
運転手 「そらぁ、わかりますよ。内地の人は、垢抜けしてるもんね」
温対が垢抜けしているとは、とても思えないが、おそらく乗った客には、みんなに同じことを言ってるのであろう。
温対記者 「この辺は、土地の値段も高いんでしょうねえ」
運転手 「そうだねえ。札幌は、函館、旭川、釧路などに比べると大都会だしねえ。結構いい値段するよ」
暇名小五郎 「はは。東京や千葉あたりと、あまり変わらないかも知れませんね」
自分で言っておきながら、暇名探偵は、千葉という言葉が妙に気になった。
運転手 「こっちには、仕事ですか?」
温対記者 「そうなんですよお。早く終わったら、遊びに行きたいんすけどねえ」
運転手 「札幌は、結構遊ぶところがあるから、良かったら案内しますよ」
温対記者 「ほんとすか?ねえ暇名さん、終わったら、すすきのですね」
暇名小五郎 「ははは」
運転手 「なんなら、いろんなとこ案内するし、中島公園のビール園や、札幌ドーム、大通公園、狸小路・・・・・」
話好きの運転手で、目的地に着くまでずうっと、しゃべり通しだった。 最近のタクシーは、黙りこくって愛想が悪いか、喋りまくって愛想が良すぎるかの両極端である。 どちらにしても、客にとっては、いい迷惑であった。
運転手 「お客さん、そこの家ですよ」
タクシーは、ようやく目的地へ着いた。 北16条周辺は、かつては北大の学生を受け入れるための下宿やアパート、寮などが点在していて、多勢の大学生が闊歩する姿が見られたものだが、今はすっかり様変わりして、民間世帯対象のマンションやオフィスビルが目立つようになってきていた。
温対記者 「あ、何か書いてありますね」
よく見ると、<と金倶楽部>という小さな立て看板が入り口に掛かっていたが、普通の住宅だった。 タクシー料金を払って、中へ入ると、玄関には5~6人の靴があった。 温対が、応対に出てきた女性に名刺を渡すと、中に通された。
訳知雀席主<70歳> 「おお、あなたたちが東京から来た人たちかね。秋田の周さんから電話があったよ」
どうやら、3万円の効果があったようだ。
暇名小五郎 「突然お邪魔しまして、すみません。どうしてもお聞きしたいことがありまして」
席主は、どうせ暇だから、構わないと言ってくれた。10畳位の部屋に、将棋台が5台並んでいた。 そのうち、3つの台で6人が対局していた。
温対記者 「将棋クラブっていうから、もっと大きい店かと思ってたんですけど」
訳知雀席主 「はは。儂は趣味でやってるだけだからな。半分は隠居生活だよ」
1日の席料も、通常の将棋センターの半額ぐらいで、ほとんど固定客が席主の人柄と実力に魅かれて集まってきていた。 今は引退したが、女流棋士の神田真由美さんの父親が開いていた、西日暮里神田教室と同じスタイルである。
訳知雀席主 「それで、用件というのは何だね?」
席主は、東京からの客に喜んでいるようだった。
暇名小五郎 「はい。実は、訳知さんが20年ほど前に、秋田県の上小阿仁村で新聞販売店を経営されていた時のことを、伺いに来ました」
訳知雀席主 「ほお、ずいぶん前のことを。・・・何故知りたいのかね?」
暇名は、これまでの経緯を要領よくまとめて説明した。
訳知雀席主 「そうか。話は分かった。・・・殺人事件が絡んでるとはねえ」
重大な事件に関係する話だと聞いて、訳知席主も少し緊張したようだった。
暇名小五郎 「正確に言いますと、22年前になるはずですが、新聞販売店でアルバイトしていた少年についてです」
訳知雀席主 「うむ。それで」
暇名小五郎 「猫面忠治という少年を覚えているでしょうか?」
訳知雀席主 「ああ、尺治さんのところの子だな。知ってるよ」
温対記者 「やっぱり」
暇名小五郎 「実は、その忠治さんは5年前に事故で亡くなってます」
訳知席主は、知らなかったようで、驚きの表情だった。
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駒の流儀・第26部 第132章
第132章「と金倶楽部」
東京池袋から秋田県、そして札幌である。
1日の行程としては、かなりの強行軍だった。秋田から札幌までは、1時間かからない。
北16条西3丁目は、JR札幌駅からだと車で約13分位の距離である。
あたりはすっかり暗くなっていた。
温対記者 「札幌に来るのは、久しぶりですねえ。なんか懐かしいなあ」
タクシーの中から見る札幌の夜の街は、華やかである。
温対記者 「すすきののほうは、もっと派手なんでしょうねえ」
暇名小五郎 「はは。時間があれば、行って見ますか?」
温対記者 「いいすねえ」
皆本編集長がいれば、遊びに来たんじゃねえぞと、怒るところだ。
温対記者 「暇名さんは、こっちのほうは来たことあるんですか?」
暇名小五郎 「いや、ないですよ。まったく初めてです」
タクシーは、左手に北海道大学の校舎の壁を映しながら、東へと走っていた。
運転手<46歳> 「お客さんは、東京からですか?」
温対記者 「そうなんですよ。わかりますか?」
運転手 「そらぁ、わかりますよ。内地の人は、垢抜けしてるもんね」
温対が垢抜けしているとは、とても思えないが、おそらく乗った客には、みんなに同じことを言ってるのであろう。
温対記者 「この辺は、土地の値段も高いんでしょうねえ」
運転手 「そうだねえ。札幌は、函館、旭川、釧路などに比べると大都会だしねえ。結構いい値段するよ」
暇名小五郎 「はは。東京や千葉あたりと、あまり変わらないかも知れませんね」
自分で言っておきながら、暇名探偵は、千葉という言葉が妙に気になった。
運転手 「こっちには、仕事ですか?」
温対記者 「そうなんですよお。早く終わったら、遊びに行きたいんすけどねえ」
運転手 「札幌は、結構遊ぶところがあるから、良かったら案内しますよ」
温対記者 「ほんとすか?ねえ暇名さん、終わったら、すすきのですね」
暇名小五郎 「ははは」
運転手 「なんなら、いろんなとこ案内するし、中島公園のビール園や、札幌ドーム、大通公園、狸小路・・・・・」
話好きの運転手で、目的地に着くまでずうっと、しゃべり通しだった。
最近のタクシーは、黙りこくって愛想が悪いか、喋りまくって愛想が良すぎるかの両極端である。
どちらにしても、客にとっては、いい迷惑であった。
運転手 「お客さん、そこの家ですよ」
タクシーは、ようやく目的地へ着いた。
北16条周辺は、かつては北大の学生を受け入れるための下宿やアパート、寮などが点在していて、多勢の大学生が闊歩する姿が見られたものだが、今はすっかり様変わりして、民間世帯対象のマンションやオフィスビルが目立つようになってきていた。
温対記者 「あ、何か書いてありますね」
よく見ると、<と金倶楽部>という小さな立て看板が入り口に掛かっていたが、普通の住宅だった。
タクシー料金を払って、中へ入ると、玄関には5~6人の靴があった。
温対が、応対に出てきた女性に名刺を渡すと、中に通された。
訳知雀席主<70歳> 「おお、あなたたちが東京から来た人たちかね。秋田の周さんから電話があったよ」
どうやら、3万円の効果があったようだ。
暇名小五郎 「突然お邪魔しまして、すみません。どうしてもお聞きしたいことがありまして」
席主は、どうせ暇だから、構わないと言ってくれた。10畳位の部屋に、将棋台が5台並んでいた。
そのうち、3つの台で6人が対局していた。
温対記者 「将棋クラブっていうから、もっと大きい店かと思ってたんですけど」
訳知雀席主 「はは。儂は趣味でやってるだけだからな。半分は隠居生活だよ」
1日の席料も、通常の将棋センターの半額ぐらいで、ほとんど固定客が席主の人柄と実力に魅かれて集まってきていた。
今は引退したが、女流棋士の神田真由美さんの父親が開いていた、西日暮里神田教室と同じスタイルである。
訳知雀席主 「それで、用件というのは何だね?」
席主は、東京からの客に喜んでいるようだった。
暇名小五郎 「はい。実は、訳知さんが20年ほど前に、秋田県の上小阿仁村で新聞販売店を経営されていた時のことを、伺いに来ました」
訳知雀席主 「ほお、ずいぶん前のことを。・・・何故知りたいのかね?」
暇名は、これまでの経緯を要領よくまとめて説明した。
訳知雀席主 「そうか。話は分かった。・・・殺人事件が絡んでるとはねえ」
重大な事件に関係する話だと聞いて、訳知席主も少し緊張したようだった。
暇名小五郎 「正確に言いますと、22年前になるはずですが、新聞販売店でアルバイトしていた少年についてです」
訳知雀席主 「うむ。それで」
暇名小五郎 「猫面忠治という少年を覚えているでしょうか?」
訳知雀席主 「ああ、尺治さんのところの子だな。知ってるよ」
温対記者 「やっぱり」
暇名小五郎 「実は、その忠治さんは5年前に事故で亡くなってます」
訳知席主は、知らなかったようで、驚きの表情だった。