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第110章「508号室」
三愛不動産で、脳外科病院の場所を教えてもらった2人は、小浜市から福井市へと移動した。
温対記者 「ねえ、暇名さん。藁人形さんの奥さんは、ご主人が病気で入院してるなんて、一言も言わなかったですよね。どうしてだろ?」
暇名小五郎 「温対さんが、あの奥さんの立場だったらどうしますか? 言いますか?」
暇名独特の、切り返しである。
温対記者 「そうですねえ。・・・やっぱり隠しておくでしょうね」
暇名小五郎 「ええ、私も同じです。特に、息子さんが亡くなってて、旦那さんも入院してるなんてことは、他人には言いたくないでしょうからね。気持ちは理解できます」
脳外科病院に着くと、暇名たちは、教えられたとおり<508号室>を訪ねた。
藁人形法子 「あら、たしか以前に自宅へ訪ねて来られた方たちですわね」
社長の妻は、暇名たちを覚えていた。
暇名小五郎 「病院まで押しかけてきて、すみません」
仕事とはいえ、何度も押しかけてくるのは、気が引けるものであった。
藁人形法子 「いいえ。まだお聞きになりたいことが、あるのですか?」
妻は、それほど嫌な顔はしていなかったので、2人ともほっとした。
温対記者 「あの時は、息子さんが亡くなられたことで、話を聞きに行ったんですけど、あれからまた殺人が起こったんですよ」
社長の妻は、少し驚いた顔をした。ベッドで寝ている藁人形社長の表情には、ほとんど変化がなかった。
藁人形法子 「そうですか。で、その殺人と私たちと、どんな関係があるのですか?」
暇名小五郎 「はい。殺されたのは<山岡>という人です。その人は、或る将棋団体の依頼を受けて、息子さんの殺人事件を調べていたのです」
藁人形法子 「その名前の方なら、家に訪ねてきましたわ」
暇名小五郎 「はい、そうでしたね。話すと長いのですが、その調査の過程において、山岡氏は奥さんに会った後、ご主人の会社にも行っております」
藁人形法子 「はあ。でも、よくそんなことまで分かりましたね」
暇名小五郎 「実は、我々もご主人の会社の方に、この場所を聞いてやってきたのです」
藁人形法子 「わかりました」
暇名小五郎 「山岡さんは、そこで強引に福井市の病院に入院していることを聞き出しました」
藁人形法子 「そうでしたか。病室に誰か訪ねて来たことは聞きましたけど、その方だったのですね」
温対記者 「その時は、奥さんは病室にいなかったんですか?」
藁人形法子 「はい。私は過労で、自宅で寝込んでいました。今は、ようやく動けるようになったところですの」
そういえば、小浜市の自宅で面会したときは、ずいぶんと具合が悪そうだったことを思い出した。
暇名小五郎 「病室には、誰か付き添っていたのでしょうか?」
相変わらず、藁人形茂和は何もしゃべらなかった。
藁人形法子 「ええ。私が義姉に頼んで、来てもらったんです。専門の付添い人を頼んでも良かったんですけど、息子のことがあって心細かったものですから、私からお願いしました」
温対記者 「このまえ僕たちが、自宅にお邪魔したときに、お会いした人ですよね」
暇名小五郎 「なるほど。そうすると、山岡氏が病室に訪ねて行った時に、お義姉さんが応対したのですね。今は、どちらに居られるのでしょうか?」
藁人形法子 「もう千葉県の自宅に帰りました。私が元気になりましたので」
温対記者 「山岡さんは、何しに来たか分かりませんか?」
藁人形法子 「義姉の話では、主人の病気のことを聞いてきたと言っていました」
暇名小五郎 「ほお。病気のことをですか・・・」
藁人形法子 「義姉は、知らない人にいきなり病気のことを聞かれても、患者の秘密だからと、教えなかったそうですわ」
暇名小五郎 「それはそうですね。ほかには、どんなことを?」
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駒の流儀・第22部 第110章
第110章「508号室」
三愛不動産で、脳外科病院の場所を教えてもらった2人は、小浜市から福井市へと移動した。
温対記者 「ねえ、暇名さん。藁人形さんの奥さんは、ご主人が病気で入院してるなんて、一言も言わなかったですよね。どうしてだろ?」
暇名小五郎 「温対さんが、あの奥さんの立場だったらどうしますか? 言いますか?」
暇名独特の、切り返しである。
温対記者 「そうですねえ。・・・やっぱり隠しておくでしょうね」
暇名小五郎 「ええ、私も同じです。特に、息子さんが亡くなってて、旦那さんも入院してるなんてことは、他人には言いたくないでしょうからね。気持ちは理解できます」
脳外科病院に着くと、暇名たちは、教えられたとおり<508号室>を訪ねた。
藁人形法子 「あら、たしか以前に自宅へ訪ねて来られた方たちですわね」
社長の妻は、暇名たちを覚えていた。
暇名小五郎 「病院まで押しかけてきて、すみません」
仕事とはいえ、何度も押しかけてくるのは、気が引けるものであった。
藁人形法子 「いいえ。まだお聞きになりたいことが、あるのですか?」
妻は、それほど嫌な顔はしていなかったので、2人ともほっとした。
温対記者 「あの時は、息子さんが亡くなられたことで、話を聞きに行ったんですけど、あれからまた殺人が起こったんですよ」
社長の妻は、少し驚いた顔をした。ベッドで寝ている藁人形社長の表情には、ほとんど変化がなかった。
藁人形法子 「そうですか。で、その殺人と私たちと、どんな関係があるのですか?」
暇名小五郎 「はい。殺されたのは<山岡>という人です。その人は、或る将棋団体の依頼を受けて、息子さんの殺人事件を調べていたのです」
藁人形法子 「その名前の方なら、家に訪ねてきましたわ」
暇名小五郎 「はい、そうでしたね。話すと長いのですが、その調査の過程において、山岡氏は奥さんに会った後、ご主人の会社にも行っております」
藁人形法子 「はあ。でも、よくそんなことまで分かりましたね」
暇名小五郎 「実は、我々もご主人の会社の方に、この場所を聞いてやってきたのです」
藁人形法子 「わかりました」
暇名小五郎 「山岡さんは、そこで強引に福井市の病院に入院していることを聞き出しました」
藁人形法子 「そうでしたか。病室に誰か訪ねて来たことは聞きましたけど、その方だったのですね」
温対記者 「その時は、奥さんは病室にいなかったんですか?」
藁人形法子 「はい。私は過労で、自宅で寝込んでいました。今は、ようやく動けるようになったところですの」
そういえば、小浜市の自宅で面会したときは、ずいぶんと具合が悪そうだったことを思い出した。
暇名小五郎 「病室には、誰か付き添っていたのでしょうか?」
相変わらず、藁人形茂和は何もしゃべらなかった。
藁人形法子 「ええ。私が義姉に頼んで、来てもらったんです。専門の付添い人を頼んでも良かったんですけど、息子のことがあって心細かったものですから、私からお願いしました」
温対記者 「このまえ僕たちが、自宅にお邪魔したときに、お会いした人ですよね」
暇名小五郎 「なるほど。そうすると、山岡氏が病室に訪ねて行った時に、お義姉さんが応対したのですね。今は、どちらに居られるのでしょうか?」
藁人形法子 「もう千葉県の自宅に帰りました。私が元気になりましたので」
温対記者 「山岡さんは、何しに来たか分かりませんか?」
藁人形法子 「義姉の話では、主人の病気のことを聞いてきたと言っていました」
暇名小五郎 「ほお。病気のことをですか・・・」
藁人形法子 「義姉は、知らない人にいきなり病気のことを聞かれても、患者の秘密だからと、教えなかったそうですわ」
暇名小五郎 「それはそうですね。ほかには、どんなことを?」