駒の流儀・第20部

第97章「息子の友だち」

越中褌事務局長 「その亡くなられた息子さんのお友達は、この村におりますか? 名前はなんと言う人ですか?」

 つい越中は、立て続けに質問した。その友達のことが、妙に気になるからであった。

    猫面鈴江 「忠治が、よく遊んでいた子は2人いましたわ」

越中褌事務局長 「2人ですか・・」

    猫面鈴江 「はい。ひとりは将棋の仲間で、時々家に来て自分の部屋で将棋をしていました」

越中褌事務局長 「将棋の仲間ですか・・・。名前は分かりますか?」

将棋と聞いて、越中は内心、小躍りした。

     猫面鈴江 「本名は知りません。息子は、その子を<ゆきちゃん>と呼んでいました」

越中褌事務局長 「そうですか。その<ゆきちゃん>の親の職業とか、家の場所とかはご存知ですか?」

  猫面鈴江 「さあ、わからないです」

        妻は、申し訳なさそうに顔をしかめた。

越中褌事務局長 「もう1人の子は、誰ですか?」

    猫面鈴江 「たまに家に連れて来る男の子で、新聞配達のアルバイト先で知り合ったと言ってました」

越中褌事務局長 「息子さんは、新聞配達をしてたのですか」

    猫面尺治 「忠治は、小遣いを稼いで、いい将棋盤を買うと言ってましたよ」

      父親の尺治は、息子の部屋には今でも、その将棋盤が置いてあると言った。

    猫面鈴江 「その子の名前は知りません。両親が何をしてたのかもわかりません」

越中褌事務局長 「お友達との付き合いは、何年ぐらいでしたか?」

  猫面鈴江 「そうですねえ・・・ゆきちゃんとは1年ちょっと。もう1人の子は半年ぐらいでしたわね」

越中褌事務局長 「どっちの子とも、短い間だったのですね。年齢はわかりますか?」

 猫面鈴江 「さあ? 2人とも忠治よりは年上に見えましたけど・・。正確には聞いたことがないので」

越中褌事務局長 「そうですか。同級生ということはないでしょうか?」

猫面鈴江 「さあ、どうかしら。もしかすると、そうかも知れませんけど」

越中褌事務局長 「息子さんが通っていた中学は、なんという学校ですか?」

猫面鈴江 「村奧中学校です」

       役場の近くで、歩いても15分位の所にある学校だった。
 

越中褌事務局長 「2人のお友達ですが、共通の友達ですか?」

猫面鈴江 「共通というと?」

よく意味がわからないようだった。

越中褌事務局長 「つまり、その友達同士は知り合いでしょうか?」

事務局長は、分かりやすいように言い直した。

猫面鈴江 「さあ、どうかしら? 3人で遊んでるのを見たことはありませんから、別々の友達で、お互い知らないのではないでしょうか」

越中褌事務局長 「それぞれ付き合っていた期間は短いようですが、親の転勤か何かの関係でしょうかね?」

猫面鈴江 「たぶんそうだと思います」

越中褌事務局長 「あの、息子さんが新聞配達をしていたという新聞販売店は、まだありますか?」

猫面尺治 「ああ、益田さんのとこだね。まだあるよ」

越中褌事務局長 「そうですか。店主さんは、同じ方でしょうか?」

猫面尺治 「さあ? 今は益田幸三さんがやってるけど、その前は誰だったかなあ」

猫面鈴江 「そうねえ、益田さんは15年ぐらいよね。忠治が働いていたときは誰だったのかしら」

     越中は、新聞販売店の場所を聞いて、猫面宅を出ようとすると、妻の鈴江が思い出したように口を開いた。

猫面鈴江 「そうそう、そういえばその<ゆきちゃん>ていう子は、その後プロの将棋指しになったとか、忠治が話していたことがありました」

越中褌事務局長 「え!! プロ棋士にですか?」

さすがに冷静な越中も、おもわず大声をあげた。

 猫面鈴江 「はい。その子の父親が、プロ棋士にしたいと、いつも言っていたそうです」   

投稿者: 悪魔仮面 投稿日時: 火, 07/20/2010 - 11:17 categories [ ]

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