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第96章「蔵の中」
東京の伊加職員から、秋田県の村を調べたと連絡を受けたが、関根宅にはファックスが無いため、電話で一つひとつ読み上げてもらうことにした。
伊加訓生職員 「事務局長、ファックスするまでもないですよ。3村だけでした」
越中褌事務局長 「たった3村か。じゃあ、書き取るから読み上げてくれ」
左手に携帯電話、右手にホールペンを持っている。越中のやることに、万事抜かりが無かった。
伊加訓生職員 「はい。大潟村、上小阿仁村、東成瀬村です」
越中褌事務局長 「そうか、わかった。有難う」
傍で聞いていた関根銀四郎は、しばらく考えていたが、思い当たったという顔をした。
関根銀四郎 「そうかそうか、わかったぞ。上小阿仁村というところじゃ」
越中褌事務局長 「そうですか! 間違いないですか?」
関根銀四郎 「ああ、間違いない。名前に記憶がある」
越中褌事務局長 「上小阿仁村の、猫なんとかさんの家ですね。解かりました。有難うございます」
関根銀四郎 「だが、むこうに行っても、それだけでわかるかのお」
越中褌事務局長 「なんとかなると思います。とにかく無駄足覚悟で行ってみます」
こうして、関根銀四郎から聞きだしたことだけを頼りに、秋田県までやって来た越中だったが、上小阿仁村に着くと村役場を訪ねた。
そこで、<猫>のつく名字の家があるか尋ねると、<猫面尺治>の家だと簡単にわかった。 他に猫の字がつく家は、無かったからである。
【秋田県上小阿仁村 猫面尺治の家】
越中が、猫面の妻に訪問の理由を話すと、中へ入るように言われ、主人の猫面尺治も現れた。
越中褌事務局長 「いまお話したような経過がありまして、こちらにお伺いした次第です」
もちろん怪人60面相の事件についても、かいつまんで話をしたが、盗難事件については、報道などで少しは知っているようだった。
猫面尺治 「よくわかりました。そういう事件に関係してるとはびっくりです。なんでも聞いてくださいな」
越中褌事務局長 「助かります。では、もうずいぶん昔で、ご主人のお爺さんの代だと思いますが、関根銀四郎という子供が、お宅の蔵の中で、駒の流儀書という巻物を見たそうです」
猫面尺治 「はい。たしかに蔵の中にありました」
越中褌事務局長 「その巻物は、今でもあるでしょうか?」
猫面尺治 「いいや。盗まれてしまって、もう無いですよ」
やはり思ったとおりだった。
越中褌事務局長 「盗まれたのは、いつ頃ですか?」
猫面尺治は、つい最近盗まれたが、それほど高価なものでもないし、別に必要なものでもないので、駐在には届けていないと話した。
越中褌事務局長 「そうですか。・・・その巻物が、猫面さんの蔵の中にあることを、知っている人はいましたか?」
肝心な質問だった。まさにこの村までやって来た最大の理由が、この質問にあった。
猫面尺治 「さあね。あんまり人に話したことも無かったし、わざわざ教えた人はいなかったけどねえ」
越中褌事務局長 「奥さんは、どうですか?」
こういうことは、主人より奥さんのほうがわかるものである。 越中は、初めから奥さんに聞きたかったのだが、儀礼的に奥さんに聞くのを後にした。
猫面鈴江 「さあ。どうだったか・・・。息子が友達に見せてたぐらいだと思いますけど」
越中褌事務局長 「息子さんの友達ですか。今、息子さんはどちらに居られるのですか?」
夫婦は、ちょっと悲しそうな顔をみせた。
猫面尺治 「長男の忠治は、5年前に交通事故で亡くなったんですよ」
越中褌事務局長 「そうでしたか。嫌なことを聞いてすみません」
猫面鈴江 「忠治が中学生の時に、仲良くしていた友達がいて、蔵の中を見せたりしてたので、巻物のことも見ているとおもいます」
場面が一巡して、再び秋田県へと戻って来た。 この先、さらなる緊張の展開が待ち受けているのである。 期待していただきたい。
なお、明日は御前会議のため、休載する。
書式オプションに関するさらに詳しい情報...
駒の流儀・第19部 第96章
第96章「蔵の中」
東京の伊加職員から、秋田県の村を調べたと連絡を受けたが、関根宅にはファックスが無いため、電話で一つひとつ読み上げてもらうことにした。
伊加訓生職員 「事務局長、ファックスするまでもないですよ。3村だけでした」
越中褌事務局長 「たった3村か。じゃあ、書き取るから読み上げてくれ」
左手に携帯電話、右手にホールペンを持っている。越中のやることに、万事抜かりが無かった。
伊加訓生職員 「はい。大潟村、上小阿仁村、東成瀬村です」
越中褌事務局長 「そうか、わかった。有難う」
傍で聞いていた関根銀四郎は、しばらく考えていたが、思い当たったという顔をした。
関根銀四郎 「そうかそうか、わかったぞ。上小阿仁村というところじゃ」
越中褌事務局長 「そうですか! 間違いないですか?」
関根銀四郎 「ああ、間違いない。名前に記憶がある」
越中褌事務局長 「上小阿仁村の、猫なんとかさんの家ですね。解かりました。有難うございます」
関根銀四郎 「だが、むこうに行っても、それだけでわかるかのお」
越中褌事務局長 「なんとかなると思います。とにかく無駄足覚悟で行ってみます」
こうして、関根銀四郎から聞きだしたことだけを頼りに、秋田県までやって来た越中だったが、上小阿仁村に着くと村役場を訪ねた。
そこで、<猫>のつく名字の家があるか尋ねると、<猫面尺治>の家だと簡単にわかった。
他に猫の字がつく家は、無かったからである。
【秋田県上小阿仁村 猫面尺治の家】
越中が、猫面の妻に訪問の理由を話すと、中へ入るように言われ、主人の猫面尺治も現れた。
越中褌事務局長 「いまお話したような経過がありまして、こちらにお伺いした次第です」
もちろん怪人60面相の事件についても、かいつまんで話をしたが、盗難事件については、報道などで少しは知っているようだった。
猫面尺治 「よくわかりました。そういう事件に関係してるとはびっくりです。なんでも聞いてくださいな」
越中褌事務局長 「助かります。では、もうずいぶん昔で、ご主人のお爺さんの代だと思いますが、関根銀四郎という子供が、お宅の蔵の中で、駒の流儀書という巻物を見たそうです」
猫面尺治 「はい。たしかに蔵の中にありました」
越中褌事務局長 「その巻物は、今でもあるでしょうか?」
猫面尺治 「いいや。盗まれてしまって、もう無いですよ」
やはり思ったとおりだった。
越中褌事務局長 「盗まれたのは、いつ頃ですか?」
猫面尺治は、つい最近盗まれたが、それほど高価なものでもないし、別に必要なものでもないので、駐在には届けていないと話した。
越中褌事務局長 「そうですか。・・・その巻物が、猫面さんの蔵の中にあることを、知っている人はいましたか?」
肝心な質問だった。まさにこの村までやって来た最大の理由が、この質問にあった。
猫面尺治 「さあね。あんまり人に話したことも無かったし、わざわざ教えた人はいなかったけどねえ」
越中褌事務局長 「奥さんは、どうですか?」
こういうことは、主人より奥さんのほうがわかるものである。
越中は、初めから奥さんに聞きたかったのだが、儀礼的に奥さんに聞くのを後にした。
猫面鈴江 「さあ。どうだったか・・・。息子が友達に見せてたぐらいだと思いますけど」
越中褌事務局長 「息子さんの友達ですか。今、息子さんはどちらに居られるのですか?」
夫婦は、ちょっと悲しそうな顔をみせた。
猫面尺治 「長男の忠治は、5年前に交通事故で亡くなったんですよ」
越中褌事務局長 「そうでしたか。嫌なことを聞いてすみません」
猫面鈴江 「忠治が中学生の時に、仲良くしていた友達がいて、蔵の中を見せたりしてたので、巻物のことも見ているとおもいます」
場面が一巡して、再び秋田県へと戻って来た。
この先、さらなる緊張の展開が待ち受けているのである。
期待していただきたい。
なお、明日は御前会議のため、休載する。