駒の流儀・第11部  第59章

 第59章「初台のマンション」

温対記者 「ねえ、暇名さん。駅からここまで7分ぐらいって聞いてたけど、実際歩いたらもっとかかりましたよねえ」

 暇名小五郎 「はは。17分の聞き間違いじゃないですか?」

      まさか、アベベが歩いての話でもなかろう。
   

  温対記者 「たしか、このあたりにあるマンションだといってました。何処だろ?」

暇名小五郎 「コンビニで聞いてみましょうか?」

      そのほうが手っ取り早そうだったので、2人はセブンイレブンに入った。

  温対記者 「ちょっとお聞きしたいんですけど、<ダイヤパレス初台>って、どの辺にあるかわかりますか?」

     店員は、20代位の若い男性と、50代の女性だった。

男性店員<22歳> 「さあ。このあたりはマンションがいっぱいあって、名前を聞いてもわからないんですよ」

      店員が考えてるときに、誰か入ってきた。

  男性店員 「あ、不知火さん。丁度いいところに来た」
 
不知火一徹<56歳> 「ん? 何んだい?」
 

      店に入ってきたのは、緑のブレザーに紅いネクタイをした50過ぎ位の男だった。
       これが代々木自動車の乗務員の制服である。

 男性店員 「今、お客さんに聞かれたんですけど、ダイヤパレス初台っていうマンションだけど、わかりますか?」
  
不知火一徹 「ああ、そこだよ」

      さすがタクシーの運転手である。即座に分かったようで、不知火は店の外に出て、右前方を指で示した。

暇名小五郎 「あ、あそこですか。わかりました。有難うございます」

     牛乳とパンを買ってから、2人は礼を述べて店を出てきた。

   温対記者 「なんだ。すぐ近くでしたね」

暇名小五郎 「はは。そんなもんですよ」

     もうかなり暗くなってきていた。マンションは、16階建てのきれいな建物だった。

  温対記者 「僕のアパートとは、全然違うなあ」

暇名小五郎 「ははは。そんなことはない。同じですよ」

     
     正面入り口から入って、マンション内の奧にある管理人室に行くと、刑事たちが3人居た。
      全員管理人や掃除人のような格好をしていた。

渡り鳥旭警部 「おお、こっちは暇名さんと温対さんの担当かね。ご苦労さんだねえ」

     渡り鳥警部が、うれしそうに出迎えてくれた。やはり名探偵が来てくれると、心強いのであろう。

暇名小五郎 「警部、今夜当り来そうですね」

  渡り鳥旭警部 「そうだといいがね。あ、この人は本物の、このビルの管理人さんだよ」

        警部は、傍に立っていた男性を暇名たちに紹介してくれた。

今陣孝太郎<44歳> 「イマジンです。ここの管理人をしてます。よろしく」

       40前後の実直そうな男だった。

温対記者 「こちらこそよろしく。行方8段の部屋は何階でしょうか?」

   今陣孝太郎 「8階です」

暇名小五郎 「行方さんは、今は不在でしょうけど、いつもは何時頃に帰ってきますかね?」

  今陣孝太郎 「さあ。その日によって違いますよ。どっちかというと不規則な生活なのでは?」

暇名小五郎 「管理人さんは、ここは長いのですか?」

  今陣孝太郎 「管理人の仕事は長いですが、このビルは3年目です」

      頭の良さそうな人物だった。

暇名小五郎 「そうですか。このビル内に泥棒が侵入するとしたら、どこから入るでしょうねえ?」

  今陣孝太郎 「はは。入り口から入りますよ」

     冗談なのか、本気なのかわからないが、シャープな受け答えをする男である。

温対記者 「それはそうだけど、入り口から入ったら、すぐ見つかるでしょう」

 今陣孝太郎 「そうです。ですが、私には何処の誰かは分かりません。ここの住民の友人や家族かも知れないし、入るのを止めることは出来ませんよ」

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