駒の流儀・第8部  第43章

第43章「第4の憂鬱」

丸潮新次郎委員 「提案したいのですが、今度また怪人60面相から予告状が来たら、合同で検討会を開くというのはどうでしょうか?」

       
 大吉三郎委員長 「合同というのは、誰々のことですか?」
 

ポアロ委員長も、咄嗟には意味がわからなかった。

丸潮新次郎委員 「暇名探偵と週刊ポテト社に、連盟理事会の3者による合同です」

  喝采賢介委員 「なるほど。良い考えですな」

      ワトスンは、すぐさま賛成票を投じた。

不利舎耕介副委員長 「私は反対だ。それでは暇名探偵に、こちらの手の内を明かすことになる」

      予想通り、ホームズが反対にまわった。

  丸潮新次郎委員 「しかしね、逆に考えれば、暇名探偵の考えも解かるわけですよ」

      コロンボは、不利舎の存在を無視するように、顔を背けたまま話している。

不利舎耕介副委員長 「我々としては、闇の棋士事件で暇名小五郎に屈辱を与えられている。彼の鼻を明かすためにも、合同会議は好ましくない」

      不利舎が、あくまでも強行に反対意見を述べたが、ここでミス・マープルの出番となる。

 湯川慶子委員 「副委員長の気持ちもわかるけど、私は合同会議に賛成よ」

       この女性の発言は重い。

不利舎耕介副委員長 「理由は何ですか?」

不利舎は、思わずムッとして聞いた。

湯川慶子委員 「つまりね、合同会議で暇名探偵や他の人たちの推理や意見を聞くことは、決してマイナスにはならないはずよ。こちらの考えや方針は適当に曖昧に伝えておいて、本当のことを言わなければいいのよ」

  喝采賢介委員 「なるほど。大したもんですなあ」

      やはり、女性の考えることは恐ろしい。

丸潮新次郎委員 「暇名探偵を、逆利用するということですね」

  湯川慶子委員 「そう。その上で、こちらの作戦を立てればいいのよ」

不利舎耕介副委員長 「うむ。湯川さんが、そう言われるのなら反対は出来ませんな」

      不利舎も、渋々賛成せざるを得なかった。

 大吉三郎委員長 「では、その合同会議の件については、私から連盟の西村専務理事と、週刊ポテト社の皆本編集長に話して、段取りをつけておきます」

      こうして、これからは3者による合同検討会が行われることが決定した日の翌日、早くもその会議を促すように、暇名探偵事務所に4回目の予告状が届いたのである。     将棋界にとっては、第4の憂鬱の始まりであった。

   【スカイタワービル5階 合同検討会議】

  3者による初めての合同検討会議は、四谷の週刊ポテト社会議室で行われた。
     暇名小五郎の他、将棋連盟理事会の役員、週刊ポテト社の記者、名人審議委員会の委員たちが出席していた。

藤田舞子 「では、怪人60面相からの手紙を公開します」

       親愛なる暇名小五郎君

        第4の流儀は、『銀』の流儀である。

         そしてその心得は『攻』

         『攻』とは、<攻撃するときは、常に柔軟でなければならぬ。攻めながらも退き、後退しながらも攻める如く、ただ闇雲に攻撃することは戒めるべきもの也>

        これが、流儀書に記されてある『攻』の心得である。
        この流儀に違反した者には、それにふさわしい品物を罰として頂戴するつもりだ。

       では、合同検討会の奮闘を祈る。

              怪人60面相

   

越中褌事務局長 「いつもと同じで、雑誌や新聞の記事を切り抜いて、文字にしています。もちろん指紋なども出ないと思います」

  桜井昇常務理事 「手紙の消印は、何処からかね?」

渡り鳥旭警部 「大阪です。東京都内であったり、千葉や神奈川だったり、毎回違う場所から投函してる。じつに用心深い」

       合同会議には、当然ながら警視庁の刑事たちも参加していた。

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